[めるママインタビュー]「大事なことを繰り返しアドバイスできる」ところに意味がある。

東京・中野 新中野女性クリニック院長 海老原肇先生インタビュー②

妊婦さんのためになるならと、試してみた

―ここからは「絆メール」ついてお聞きします。最初は、私たちがいきなりメールをお送りしてテスト運用をお願いしたわけですが、すぐに快諾してくださったのはなぜでしょうか。

前述の通りクリニックの年間分娩数は約500で、日々の外来数は100~150人くらい。外来数は誰にいっても驚かれます。つまり、これ以上妊婦さんが増えると、私の身体がいくつあっても足りないような状況です。だから、来院を促すための広告・宣伝のためのものなら、必要を感じていませんでした。

でも説明を聞くとそうではないようだったので、最初は「まあ会ってみるくらいなら」といった気軽な気持ちでした。試してみるかみないかは別として、話を聞けばアドバスくらいはできるかなと。その上で、それが妊婦さんのためになるものであれば、試してみてもいいかなと。

― 結果的にすぐにご快諾いただき、ありがとうございます。「絆メール」は妊婦さんに配信する準備として、産院の先生方に「基本原稿」の”カスタマイズ”、つまり産院の考えや方針に従って添削・修正をお願いするわけですが、このプロセスでとくに注意した点はあるでしょうか。

「基本原稿」は、めるママの皆さんが過去に同様のコンセプトの書籍を2冊作ったノウハウが反映されていると聞いていたので、お腹の赤ちゃんの発達プロセスなど、医学情報の面で問題はなさそうだと見ていました。実際に私自身が読んでみても、大きな問題はありませんでした。

気になるのは、クリニックの方針と異なった記述があるかどうか。それほど多くはありませんでしたが、明らかに異なっている部分はもちろん直しました。

あと私としては、「時期ごとに大事なことは、繰り返し伝える」ように手を入れました。例えば、妊娠初期のつわりへの対処法や、後期の陣痛時の対応の仕方など、よく理解してもらう必要があることは、繰返し原稿に入れるようにしました。重要なことは、一度読んだだけでは忘れてしまうかもしれないので、何度も繰り返し読んでもらうことでイメージを持ってもらうという感じです。このあたりは、編集を担当されたスタッフの皆さんがご存知の通りです。

先程も申し上げた通り、日々クリニックに来る妊婦さんが多いので、一人ひとりに妊婦さんに多くの時間を割けません。大事なことの説明も、どうしても急ぎ足になって伝わりにくい。その点を考えると、「クリニックから毎日メールでのアドバイスが届く」というのは、とても意味があることに感じています。

健診のフォローになっているかもしれない

―妊婦さんの反応はいかがでしょうか?

↑クリニックで使用中の登録カード。これが妊婦さんに手渡される。

「登録カード」(右画像)を渡すとき、「毎日お腹の赤ちゃんの情報がいきますよ」というと驚かれます。「毎日メールで届きます」というと、けっこうびっくりされる妊婦さんが多いですね。

でも「あなたの赤ちゃんではなくて、もちろん一般的な赤ちゃんの話ですよ」とはいいますが(笑)。それでも「そんなことをしてもらえるんだ」と、とても喜ばれています。

―健診時に、メールのことが話題になることがありますか?

1日あたり100~150人の外来があるので、こうした話をする時間がないのが正直なところです。妊婦さんのほうも、私が非常に忙しいことはわかるようですから、質問もしにくいでしょうし(笑)。だからこのメールマガジンが、案外フォローになっているかもしれませんね。

―どんな妊婦さんにも当てはまる内容のメールマガジンと、「産院オリジナルメールマガジン」では、どのような違いを感じておられますか?

産院として気をつけてもらいたい内容を入れることができる点でしょうか。こうした部分は、どこの産院もだいたい似たような内容になるかもしれませんが、同じことでも伝え方次第で、妊婦さんの受け取り方は変わると思います。微妙なニュアンスの違いを表現できたり、こちらがとくに知らせたいことを伝えることができるのが、「オリジナル」のいい部分かもしれません。

―最後に、妊婦さんへのメッセージをお願いします。

お産は本当に大変なものですが、赤ちゃんと逢えたらその喜びは本当に大きいし、子育てには苦労もありますが、同時に人生の大きな楽しみと喜びがあると思います。子どもを産むことは、女性にしかできない大きな仕事です。中には妊娠やお産を女性に課せられた義務のように感じる方もいらっしゃいますが、女性にしか許されていない権利でもあるのです。男性はどんなに産みたくても産めない。だからもし、女性として赤ちゃんを産む幸運に恵まれたのなら、それを本当に大事にしてもらいたいと思っています。

―ありがとうございました。

[編集後記]

当時はまだその名前さえも決まっていなかった「絆メール」のテスト運用を、まずはメールで先生にお願いし、その後電話をしたことを昨日のことのように覚えています。先生からすれば、よくある営業電話のひとつだったかもしれないし、よくわからない人間からの怪しい申し出だったかもしれないのに、頭から否定せずお会いしてくれたこと、さらに主旨に賛同してテスト運用をその場で快く引き受けてくれたことに、本当に感謝の気持ちで一杯です。

その後何度か先生のクリニックに通ううちに、先生が料理好きで、ときに自ら腕をふるって入院中の妊婦さんに振る舞われること知りました。そこで取材後に、「人気のメニューは?」とお聞きしたところ、「キッシュと中華粥でしょうか」との答え。本格的すぎて恐れ入りました。

新中野女性クリニック院長 海老原肇先生
(産婦人科学会専門医/母体保護法指定医)
聖マリアンナ医科大学にて医学博士号を取得
聖マリアンナ医大横浜市西部病院にて周産期センター医長および 産婦人科医長を兼務
2001年10月 新中野女性クリニック開院
新中野女性クリニックHP http://www.snwomen.net/

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