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「めるママ」について

日本のお産の現場が今、さまざまな問題で揺れています。

お産に関わる人たちの過酷な労働実態、産婦人科医不足や分娩施設の減少…お産の現場は今、ゆとりを失いつつあります。世界一の安全性を誇る日本の出産環境は、周産期医療スタッフの方々のギリギリの踏ん張りと想いで、かろうじて成立しているのかもしれません。

またこうした出産を取りまく現状は、妊婦さん側から見ると「分娩施設が近くにない」「妊婦健診が混み合い、先生とコミュニケーションしづらい」といった問題となってあらわれています。

時代や社会の変化に伴い、出産事情も変化します。

しかし、これまでも、これからも、 「無事に正期産を迎え、元気な赤ちゃんを産みたい、産んでもらいたい」 というのは、妊婦さんと産院、どちらにも共通する願いではないでしょうか。

「絆(きずな)メール」は2009年、お産の現場で働く方々と、妊娠・出産というかけがえのない時間の中にいる妊婦さんとその家族をサポートしたいという想いからスタートした、当社のプロジェクト「めるママ」のコミュニケーション支援システムです。

「絆(きずな)メール」とは

「絆メール」とは、

  • 産院と妊婦さんのつながりをもっと強くすることが、安全・安心・信頼の上に成り立つお産に役立つのではないか
  • それによって、お産の現場の負担軽減につながるのではないか

と考えて、作られたメール配信サービスです。

出産施設が「送信元」となり、その出産施設に通う妊婦さんの携帯メール宛に、胎児の発達過程や妊娠中の体調管理のアドバイス等を、登録日から出産予定日(プラス6日)までの毎日、自動で配信します。 「毎日」というところが、大きな特色です。

「絆メール」で妊婦さんに送る内容

  • お腹の赤ちゃんの成長の様子
  • 妊娠中の日常生活を送る上でのアドバイス
  • 健康管理や食事面のアドバイス
  • 産院からのお知らせ など

こんなメール↓が妊婦さんに届きます。(クリックで拡大)

「絆メール」の特長、期待できる効果

「絆メール」を利用することで得られる効果は、妊婦さん側、産院側それぞれにあると考えています。

<妊婦さんから見た場合>

  • 妊娠、出産に対する知識が深まる。
  • 赤ちゃんの成長が毎日わかるため気持ちが安定し、お腹の赤ちゃんを大事にしようという思いが強まる。
  • 毎日メールを受け取ることで、自分が妊婦であるという自覚がもてる。
  • 毎日メールを受け取ることで産院や主治医、スタッフの方々とのコミュニケーションの機会が増え、信頼と安心感が増す。
  • 出産のリスクへ対する理解が深まる。

妊娠期間の充実、妊娠中の避けられるトラブル回避につながります。

<産院から見た場合>

  • 妊婦健診時だけでなく、毎日メールを送ることによる「コミュニケーション」機能。
  • 妊娠特有の不安や症状に対し繰り返しメッセージを送ることによる「心理サポート」機能。
  • 体重管理や食事について細かくアドバイスすることによる「健康管理」機能。
  • 医学的に正しい知識を提供することにより、心がけ次第で避けられるリスクを回避し、妊婦としての自覚を促す「教育・啓蒙機能」。
  • 臨月でお産の兆候があらわれた際、また不測の事態の際、携帯電話からすぐに電話・メールができる「緊急連絡機能」。

妊婦さんとの信頼関係の構築、また妊婦さんの健康管理意識の高まりにより、
妊娠中に避けられるトラブルの回避につながります。

私たちは、絆メールは、妊婦さん、産院どちらにも役立ててもらえるのではないかと考えています。無事に正期産の時期を迎え、元気な赤ちゃんを産みたいという妊婦さん、 産んでもらいたいという産院の願いのどちらにも、少しでも貢献できればと考えています。

「絆メール」についての詳しいお問い合わせはこちら

プロジェクトのきっかけ

安心できるお産と情報を

日本のお産の現場が今、さまざまな問題で揺れています。

お産に関わる人たちの過酷な労働実態、産婦人科医不足や分娩施設の減少…お産の現場は今、ゆとりを失いつつあります。世界一の安全性を誇る日本の出産環境は、周産期医療スタッフの方々のギリギリの踏ん張りと想いで、かろうじて成立しているのかもしれません。

またこうした出産を取りまく現状は、妊婦さん側から見ると「分娩施設が近くにない」「妊婦健診が混み合い、先生とコミュニケーションしづらい」といった問題となってあらわれています。

時代や社会の変化に伴い、出産事情も変化します。

しかし、これまでも、これからも、 「無事に正期産を迎え、元気な赤ちゃんを産みたい、産んでもらいたい」 というのは、妊婦さんと産院、どちらにも共通する願いではないでしょうか。

「初めて親になった」私たち

私たちアジアンバリューは、書籍・雑誌の企画立案や編集、WEBサイトの構築・運用を手がける会社です。社名が表す通り、アジア各国にアクセスし、情報をとりまとめることを得意としています。正直に申し上げるとこれまで、周産期医療や医療全般との接点は、ほとんどありませんでした。

そんな私たちが、なぜ出産現場の方々や妊婦さんの役に立ちたいと考えたのか。きっかけは非常に個人的なことです。私たちのスタッフには、ここ数年で「初めて親となる」体験をした者が多かったのです。

そのとき私たちは、妊娠・出産という体験のかけがえのなさを実感するとともに、それまで、「自分にはあまり縁のない社会問題」としか認識していなかった、お産を取り巻く状況(分娩施設の減少、産婦人科医のハードな働き具合など)を目の当たりにすることになりました。

スタッフのひとりは、分娩施設の減少で、里帰り出産をあきらめました。また、あるスタッフの奥さんは、妊婦健診の混み具合に驚き、
「本当は先生にいろいろ質問したかったけど、時間がかかると迷惑だろうと思って、何もいえなかった」
と当時を振り返ります。

きっかけは、一冊の本

社会問題といわれるものは、多くの人が「どうにかしたい」と思っていても、実際の改善のためにアクションを取る人は、少数派です。とりわけ妊娠・出産は、その時期が過ぎてしまうと、問題意識も薄れる傾向にあります。たとえ意識を持ち続けていても、妊娠中や子育てに追われる日々に突入すると行動には移しづらいし、どのように行動していいかもわからない。私たちもそうでした。

しかし2006年、出産を経験したスタッフ関係者が「安心マタニティブック」という書籍を企画、製作したことがきっかけになって、「お産を取り巻く問題に対して何かできることはないか」という私たちの気持ちは、形となって動き出しました。

「妊娠期間を大事に過ごしてほしい」というコンセプトのその本は、出産予定日までの毎日、情報を伝えるカレンダー形式で編集され、現在も日本中の妊婦さんに広く支持されています。この本が支持されたことで、私たちはひとつのアイデアを得ました。

「こうした情報を本ではなく、通っている産院から受け取ると、妊婦さんはもっとうれしいのではないか。そしてそれは、産院側にとっても”いい”と思えるものではないか」

もっとも身近で手軽なツールである「携帯メール」「アプリ」を利用し、おなかの赤ちゃんの成長、妊婦さんの不安な気持ちを和らげ励ますようなメッセージ、健康管理に役立つアドバイスを日々、産院が提供する。妊婦検診だけでは伝えきれない、医師や助産師のとしての想いを伝える。

また、赤ちゃんは無事に産まれて当然という「安全神話」のさなかにある妊婦さんにも、不安を煽ることなく少しずつ「お産のリスク」について説明し、「普通に生まれる」ことそのものがかけがえのない体験であることをメッセージとして届ける。

これによって「安全」「安心」「信頼」が生み出され、よいお産につながるのだとしたら、それは誰にとってもいいことなのではないか。さらに、産院と妊婦さんとの信頼関係を強化すること、妊婦さんの健康管理意識が高まることは、周産期医療で働く方々の負担をわずかながらでも軽減することにつながるのではないか──。

私たちは、「社会起業」(ソーシャル・ベンチャー)のプロジェクトとして位置づけ、「めるママ」「ママ一年生」というプロジェクト名をつけました。

「安心と信頼」が力になる

つねに命の重さと向きあい、日々献身的なご努力で周産期医療を支えている全国の産婦人科医、助産師、スタッフの方々に、私たちは心から敬意を表します。感謝の気持ちを抱いています。新しい命を宿し、育てていく妊婦さんとその家族の未来が、明るいことを、私たちは願っています。

現在の周産期医療が抱える問題に、私たちのような小さな会社ができることは、限られているかもしれません。しかし私たちは、「安心と信頼」の上に成り立つお産と、その後の子育てに、「アプリ」や「メールマガジン」が力になると信じています。私たちの想いをのせた小さなITシステムが、「お産」という社会の根底を支える大きな営みにほんの少しでも役立つことができたら、これほどうれしいことはありません。

社会起業プロジェクト「めるママ」 スタッフ一同

スタッフが制作した本

誕生から365日まで。ママと赤ちゃんの子育て安心ダイアリー

ママと赤ちゃんの子育て安心ダイアリー著者:森 泰二朗
価格:¥1,400
出版社:宝島社
発売日:2011/1/20

幸せのマタニティブック―はじめての妊娠・出産でも安心!

幸せのマタニティブック著者:有馬 宏和, 主婦と生活社
価格:¥1,500
出版社:主婦と生活社
発売日:2009/11

「絆メール」とメルマガ登録

■メルマガ登録(個人登録)

メルマガの主な内容

妊婦さんは、出産予定日を登録するだけで、出産予定日+13日目まで「毎日」、お腹の赤ちゃんの状態とその日のママへのアドバイスを記したこんな↓メールが届きます(クリックで拡大)。パートナーの男性にも好評です。

■登録方法

メルマガ登録(無料)


ドメイン指定受信の方法についてはこちらを御覧下さい。

※配信の解除は、メールの文面からすぐに登録できます。
※妊婦さんの登録情報は「めるママ」の個人情報保護方針に基づいて厳重に守られます。

■「絆(きずな)メール」(産院より発信)

「絆メール」とは、

  • 産院と妊婦さんのつながりをもっと強くすることが、安全・安心・信頼の上に成り立つお産に役立つのではないか
  • それによって、お産の現場の負担軽減につながるのではないか

と考えて、作られたメール配信サービスです。

出産施設が「送信元」となり、その出産施設に通う妊婦さんの携帯メール宛に、胎児の発達過程や妊娠中の体調管理のアドバイス等を、登録日から出産予定日(プラス6日)までの毎日、自動で配信します。 「毎日」というところが、大きな特色です。

「絆メール」の特長、期待できる効果

「絆メール」を利用することで得られる効果は、妊婦さん側、産院側それぞれにあると考えています。

<妊婦さんから見た場合>

  • 妊娠、出産に対する知識が深まる。
  • 赤ちゃんの成長が毎日わかるため気持ちが安定し、お腹の赤ちゃんを大事にしようという思いが強まる。
  • 毎日メールを受け取ることで、自分が妊婦であるという自覚がもてる。
  • 毎日メールを受け取ることで産院や主治医、スタッフの方々とのコミュニケーションの機会が増え、信頼と安心感が増す。
  • 出産のリスクへ対する理解が深まる。

妊娠期間の充実、妊娠中の避けられるトラブル回避につながります。

<産院から見た場合>

  • 妊婦健診時だけでなく、毎日メールを送ることによる「コミュニケーション」機能。
  • 妊娠特有の不安や症状に対し繰り返しメッセージを送ることによる「心理サポート」機能。
  • 体重管理や食事について細かくアドバイスすることによる「健康管理」機能。
  • 医学的に正しい知識を提供することにより、心がけ次第で避けられるリスクを回避し、妊婦としての自覚を促す「教育・啓蒙機能」。
  • 臨月でお産の兆候があらわれた際、また不測の事態の際、携帯電話からすぐに電話・メールができる「緊急連絡機能」。

妊婦さんとの信頼関係の構築、また妊婦さんの健康管理意識の高まりにより、
妊娠中に避けられるトラブルの回避につながります。

私たちは、絆メールは、妊婦さん、産院どちらにも役立ててもらえるのではないかと考えています。無事に正期産の時期を迎え、元気な赤ちゃんを産みたいという妊婦さん、 産んでもらいたいという産院の願いのどちらにも、少しでも貢献できればと考えています。

「絆メール」についての詳しいお問い合わせはこちら

医療関係者の皆様へ

  • 「絆メール」は、産院から、その産院に通う妊婦さんに「毎日」送るメールシステムです。
  • ご利用の際、メールの発信元(送信者名)は、産院の名前になります。
  • ご利用の際は「めるママ」スタッフが、「メール文面」の原稿作成を担当します。
  • 「メール文面」を作成するときは、「めるママ」スタッフが先生や産院スタッフの方々から入念にヒヤリングや打ち合わせを行い、その産院の考え方や方針をきめ細やかに反映します。
  • とはいえ、周産期医療関係者の方々は激務かつ多忙ですので、少ない時間でニーズに適った原稿を作る方法やシステムを用意しおります。
  • 利用料は、現在のところ有料です。しかしながら将来的には、企業協賛による無料化を目指しています。

「絆メール」に関するお問い合わせこちら

企業の方へ

「パートナー法人」(協賛企業)について

「め るママ」のプロジェクトは、社会に貢献したいという想いがある一方で、企業体として収益化を目指しています。非営利よりは、マーケットにさらされてもなお 社会に貢献できるサービスを提供できるほうが、長い目で見て誰にとっても有益だと考えるからです。このプロジェクトを「社会起業」と位置づけた理由も、こ こにあります。

「めるママ」事務局では、その収益化の一環として、志ある企業による「パートナー法人」(協賛企業)を募集しています。今はまだ始まったばかりでパートナー法人へのお返しはわずかなものにしかなりませんが、将来は大きな形でお返しできればと考えています。

「パートナー法人」に関するお問い合わせはこちら

[めるママインタビュー]出産は女性だけができること。そのチャンスを大事にしてほしい。

東京・中野 新中野女性クリニック院長 海老原肇先生インタビュー①

社会起業プロジェクト「めるママ」では、お会いしたお産の現場の方々の生の声も積極的に伝えていきます。第1回目は、「絆メール」が始まったばかりの頃、テスト運用を引き受けてくださった新中野女性クリニックの海老原肇先生です。

高齢でのお産が増えてきた

―先生のクリニックの年間分娩数は約500。中野区ではもっとも多いそうですが、この地域はどういった妊婦さんが多いですか?

他の産院さんに紹介させていただいている妊婦さんも含めると、年間約700~800人くらいになります。年齢層は一昔前と比べると高くなっていて、仕事を持っている方は6割くらいでしょうか。

昨今は、仕事を休むことができない、働きながら育てることはできないなどで、出産を迷われる方が目立ちます。家計や仕事の環境が整うまで待っていたら、高齢 出産になってしまったというお母さんも多い。高齢のお産は身体への負担がきついしリスクも高くなるためできるだけ避けたいのですが、背景には政治や福祉の 問題があるので、クリニックだけではどうにもできないのが現状です。

―バースプランは、広い範囲で希望に応えておられますね。

今は自然分娩か無痛分娩か、母乳にするか混合にするか、母子同室か別室かなど、実にさまざまお産のスタイルがありますが、それぞれに長所と短所があってな にがベストとはいえません。短所があるからと頭から否定するのではなく、長所もみて、最後はお母さん自身に産み方を選んでもらいたい。そうして納得しも らってたスタイルのお産をサポートするためにベストを尽くしたいと思っています。

だから私のクリニックでは、バースプランの選択肢をできる限り広く揃えて、お母さんに選んでいただくようにしています。選択肢を広くして、自分がどうしたいんだという意志のもとで産むことができる環境を提供できれば、それが一番いいですから。

―より安全なお産のための帝王切開が増える傾向にある中、先生のクリニックでは帝王切開がそれほど多くないように思いますが。

た しかに、より安全策をということで早め早めに帝王切開を選択することが増えているようですが、これは本当にいたしかたないことです。でも私は、多くのお産 はできるだけ早めに施策を講じれば自ずと帝王切開の割合は減ると考えていて、それがなんとかうまくいっているのかもしれません。とはいえ、必要と判断すればすぐに帝王切開に踏み切りますから、ケースバイケースです。自然分娩だけがベストというわけはありません。

「普通にうまれて当たり前」ではない

―先生は2001年に開業する前、横浜の聖マリアンナ医大横浜市西部病院の周産期センターで11年間務められていました。周産期センターはとてもきつい現場だと聞いていますが。

周産期センターは、普通の妊婦さんもいますが、地域の産院で母体に危険があると判断した場合や早産、また産後の新生児に危険がある場合の受け入れ施設で す。私がいた横浜市西部病院周産期センターは、年間分娩数が800件くらいで、そのうち年間130人くらいが地域の産院からの「母体搬送」(※)によるも のでした。

(※診療所(クリニック)や助産院では対応できない状態の妊婦を、周産期医療センターや設備が整った総合病院に移送すること)

搬送されてくる妊婦さんの中には、それこそ生きているのが不思議なくらいの方も少なくありませんでした。しかも、交通事故などではなく、普通の妊娠生活を送っていて、ある日突然そんな状況になることがあるんです。事実私は、悲しい例をかなり多くみてきました。

誤解を恐れずにいえば、妊娠は、生物学的にはちょっと「異常」な状態。赤ちゃんを産むその時期だけ、その準備のためにだけに女性の身体は劇的に変化します。 それは危ういバランスでかろうじて正常を保っているようなもので、お母さんへの負担はみなさんが思う以上に重くて、ちょっとしたきっかけでとんでもないこ とが起こりえます。

だからこそ、妊婦さんやその周りの人は、こうしたことをきちんと自覚した上で妊娠生活を送ってほしい と思っています。私は、妊婦さんに対して厳しい面があるかもしれませんが、それは周産期センターで、ちょっとしたきっかけでとんでもないことになった例を 多くみてきたからかもしれません。

日本は現在、母体死亡率、新生児死亡率ともに世界で一番低い国ですが、それが逆に、「普通にうまれて当たり前」だと誤解されることにつながっているようです。でも、そうではありません。「普通にうまれて当たり前」になったのは、先人のおかげ で医療技術や機器の進歩があったからだし、現場の医師ががんばっているから。妊娠・出産は本来、母体にとって負担が大きく危険なことなのは、歴史をひもと けば明らかです。あまりうるさくいうのも考えものですが、できればこうしたことをよく理解した上で、赤ちゃんを産んでほしいと思っています。一人の人間が 誕生するということは、実に貴重でかけがえのないことなんです。

(東京・中野 新中野女性クリニック院長 海老原肇先生インタビュー②に続く)

新中野女性クリニック院長 海老原肇先生
(産婦人科学会専門医/母体保護法指定医)
聖マリアンナ医科大学にて医学博士号を取得
聖マリアンナ医大横浜市西部病院にて周産期センター医長および 産婦人科医長を兼務
2001年10月 新中野女性クリニック開院
新中野女性クリニックHP http://www.snwomen.net/

[めるママインタビュー]「大事なことを繰り返しアドバイスできる」ところに意味がある。

東京・中野 新中野女性クリニック院長 海老原肇先生インタビュー②

妊婦さんのためになるならと、試してみた

―ここからは「絆メール」ついてお聞きします。最初は、私たちがいきなりメールをお送りしてテスト運用をお願いしたわけですが、すぐに快諾してくださったのはなぜでしょうか。

前述の通りクリニックの年間分娩数は約500で、日々の外来数は100~150人くらい。外来数は誰にいっても驚かれます。つまり、これ以上妊婦さんが増えると、私の身体がいくつあっても足りないような状況です。だから、来院を促すための広告・宣伝のためのものなら、必要を感じていませんでした。

でも説明を聞くとそうではないようだったので、最初は「まあ会ってみるくらいなら」といった気軽な気持ちでした。試してみるかみないかは別として、話を聞けばアドバスくらいはできるかなと。その上で、それが妊婦さんのためになるものであれば、試してみてもいいかなと。

― 結果的にすぐにご快諾いただき、ありがとうございます。「絆メール」は妊婦さんに配信する準備として、産院の先生方に「基本原稿」の”カスタマイズ”、つまり産院の考えや方針に従って添削・修正をお願いするわけですが、このプロセスでとくに注意した点はあるでしょうか。

「基本原稿」は、めるママの皆さんが過去に同様のコンセプトの書籍を2冊作ったノウハウが反映されていると聞いていたので、お腹の赤ちゃんの発達プロセスなど、医学情報の面で問題はなさそうだと見ていました。実際に私自身が読んでみても、大きな問題はありませんでした。

気になるのは、クリニックの方針と異なった記述があるかどうか。それほど多くはありませんでしたが、明らかに異なっている部分はもちろん直しました。

あと私としては、「時期ごとに大事なことは、繰り返し伝える」ように手を入れました。例えば、妊娠初期のつわりへの対処法や、後期の陣痛時の対応の仕方など、よく理解してもらう必要があることは、繰返し原稿に入れるようにしました。重要なことは、一度読んだだけでは忘れてしまうかもしれないので、何度も繰り返し読んでもらうことでイメージを持ってもらうという感じです。このあたりは、編集を担当されたスタッフの皆さんがご存知の通りです。

先程も申し上げた通り、日々クリニックに来る妊婦さんが多いので、一人ひとりに妊婦さんに多くの時間を割けません。大事なことの説明も、どうしても急ぎ足になって伝わりにくい。その点を考えると、「クリニックから毎日メールでのアドバイスが届く」というのは、とても意味があることに感じています。

健診のフォローになっているかもしれない

―妊婦さんの反応はいかがでしょうか?

↑クリニックで使用中の登録カード。これが妊婦さんに手渡される。

「登録カード」(右画像)を渡すとき、「毎日お腹の赤ちゃんの情報がいきますよ」というと驚かれます。「毎日メールで届きます」というと、けっこうびっくりされる妊婦さんが多いですね。

でも「あなたの赤ちゃんではなくて、もちろん一般的な赤ちゃんの話ですよ」とはいいますが(笑)。それでも「そんなことをしてもらえるんだ」と、とても喜ばれています。

―健診時に、メールのことが話題になることがありますか?

1日あたり100~150人の外来があるので、こうした話をする時間がないのが正直なところです。妊婦さんのほうも、私が非常に忙しいことはわかるようですから、質問もしにくいでしょうし(笑)。だからこのメールマガジンが、案外フォローになっているかもしれませんね。

―どんな妊婦さんにも当てはまる内容のメールマガジンと、「産院オリジナルメールマガジン」では、どのような違いを感じておられますか?

産院として気をつけてもらいたい内容を入れることができる点でしょうか。こうした部分は、どこの産院もだいたい似たような内容になるかもしれませんが、同じことでも伝え方次第で、妊婦さんの受け取り方は変わると思います。微妙なニュアンスの違いを表現できたり、こちらがとくに知らせたいことを伝えることができるのが、「オリジナル」のいい部分かもしれません。

―最後に、妊婦さんへのメッセージをお願いします。

お産は本当に大変なものですが、赤ちゃんと逢えたらその喜びは本当に大きいし、子育てには苦労もありますが、同時に人生の大きな楽しみと喜びがあると思います。子どもを産むことは、女性にしかできない大きな仕事です。中には妊娠やお産を女性に課せられた義務のように感じる方もいらっしゃいますが、女性にしか許されていない権利でもあるのです。男性はどんなに産みたくても産めない。だからもし、女性として赤ちゃんを産む幸運に恵まれたのなら、それを本当に大事にしてもらいたいと思っています。

―ありがとうございました。

[編集後記]

当時はまだその名前さえも決まっていなかった「絆メール」のテスト運用を、まずはメールで先生にお願いし、その後電話をしたことを昨日のことのように覚えています。先生からすれば、よくある営業電話のひとつだったかもしれないし、よくわからない人間からの怪しい申し出だったかもしれないのに、頭から否定せずお会いしてくれたこと、さらに主旨に賛同してテスト運用をその場で快く引き受けてくれたことに、本当に感謝の気持ちで一杯です。

その後何度か先生のクリニックに通ううちに、先生が料理好きで、ときに自ら腕をふるって入院中の妊婦さんに振る舞われること知りました。そこで取材後に、「人気のメニューは?」とお聞きしたところ、「キッシュと中華粥でしょうか」との答え。本格的すぎて恐れ入りました。

新中野女性クリニック院長 海老原肇先生
(産婦人科学会専門医/母体保護法指定医)
聖マリアンナ医科大学にて医学博士号を取得
聖マリアンナ医大横浜市西部病院にて周産期センター医長および 産婦人科医長を兼務
2001年10月 新中野女性クリニック開院
新中野女性クリニックHP http://www.snwomen.net/

「絆メール」アンケート調査結果のレポート①

【アンケート調査の詳細】 対象:新中野女性クリニック(東京・中野)のメールマガジン登録者282人の妊婦さん 実施日:2010年4月19日 アンケート依頼メールを一斉配信 配信数:282件 有効回答数:141件(4月20日正午現在) 回答率:50%

【アンケート結果】

Q1:メールマガジンを週に何回くらい読んでいますか?(一つだけ選択) 回答数 (%)
毎日読んでいる 135 95.74
週に5~6日くらい 3 2.13
週に3~4日くらい 2 1.42
週に1~2日くらい 0 0.00
決まっていないが、たまったところでまとめ読み 0 0.00
あまり読まない 0 0.00
入力なし 1 0.71
合計 141 100.00

Q2:メールマガシン゙に登録してみていかがでしたか?(ひとつだけ選択) 回答数 (%)
とてもよかった 110 78.01
よかった 28 19.86
ふつう 3 2.13
あまりよくなかった 0 0.00
よくなかった 0 0.00
合計 141 100.00

Q3:「とてもよかった」「よかった」という人は、メルマガのどんなところがよかったですか?(複数選択可) 回答数 (%)
毎日お腹の赤ちゃんの成長がわかる点 124 87.94
妊娠経過に合わせて、日常生活で気をつけるべきこと等を知ることができた点 85 60.28
妊娠経過に合わせて、食事や栄養面について知ることができた点 37 26.24
とにかく「毎日」、妊娠・出産に対する情報が得られた点 96 68.09
クリニックに親しみを感じた点 24 17.02
夫や家族にも登録してもらい、妊娠・出産について理解を深めてもらえた点 36 25.53
そのほか 7 4.96
合計 141 100.00

Q4:メルマガを受け取ることで、日常生活に影響はありましたか?(複数選択可) 回答数 (%)
妊婦という自覚を持って生活するようになった 86 60.99
妊娠・出産についての情報を積極的に得ようという気持ちになった 70 49.65
食事面に気をつけるようになった 23 16.31
積極的に体を動かすようになった 10 7.09
そのほか 19 13.48
合計 141 100.00

Q5:メルマガを受け取ることで、気持ちの面に影響はありましたか? (複数選択可) 回答数 (%)
お腹に赤ちゃんがいるという自覚を強く持つようになった 84 59.57
不安な気持ちがやわらいだ 68 48.23
妊娠している喜びが増した 64 45.39
前向きな気持ちになった 36 25.53
クリニックや先生に親しみが増した 21 14.89
かえって不安が増して、妊娠生活がつらくなった 1 0.71
そのほか 7 4.96
合計 141 100.00

Q6:そのほか、メルマガを利用してみての感想や意見などあれば、ぜひお書きください。 (メッセージ入力欄) 回答数 (%)
入力あり 56 39.72
入力なし 85 60.28
合計 141 100.00

最後、Q6の質問は自由記入欄ですが、アンケートの協力してくれたうちの約4割の妊婦さんが、積極的な意見をよせてくれました。

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